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にほんしゅのせかい 言いたい放題


by sasatatsu

今更ながら「地酒」について 導入部

当地秋田の地酒、正確には特定名称酒(特名酒と略)事情は一見ブームで有るかに見える。従来の秋田の事情と大きく違うのは、県内酒以外で情報誌やSNSで話題になる銘柄が県内の売り場で意外な速さで入手可能となった事である。

当方がこの業界に『デモシカ』で入ったのが平成初期。酒類業界には全くのド素人、加えて秋田の特殊事情(この構造は各分野に未だ継続中)なんぞ気もつかなかった。当時新進気鋭の地酒蔵として有名になりつつあった関西の某蔵へ取引交渉に伺った際である、「来て頂く事はかまへんですが、お分けする酒はありまへんで。」と。腹芸を読み取る能力が生活習慣として備わっている関西人なら「来てもらっても困る」と理解すべき言葉である。業界の新参者ゆえその意味する事を言葉通りに受け取りのこのことお邪魔した。後から蔵元に伺うに、その時は『秋田の小売りと取引する気は更々無かった(秋田県として県外酒とくに特名酒の移入実績はほとんど皆無だった)』そうで、話の中で偶然当方の出自が美濃は長良である事が判り門前払いは止めてお試しで、になった。他の或る県外蔵では『秋田でっか、杜氏さんは南部流ですかな』に衝撃を受けた。秋田と言えば酒どこで、造り手は有名な山内杜氏集団だ。と地元の座学では。実はここで衝撃を受ける方がアホであった。平成の初期に県外で活躍する山内杜氏は一人いたかどうか位で存在は完全なローカルであった。この事実に頭が回らない事自体に、当地における構造的特殊事情が見て取れる。ぶっちゃけ言えば、偉大なる井の中の蛙集団である。こういう事を体感しつつ、一場一場と県外の蔵を開拓していた。その訳は、秋田の特名酒に時めかなかったのだ。この点は参入時に全くのド素人が有利?に働いた。先入観が無いので利き酒時にラベルを気にしなかった。と或る蔵と交渉中に、新興地酒蔵に特化した問屋と言う存在が判り、業界の常識を知らないから、無謀にもお取引交渉を。結果は「実績皆無の秋田県の小売りさんはちょっとね」でご丁寧に断られた。この頃になると真面な地酒関連は簡単に新規取引を受け入れないものだ、と理解できるようになった。どの御蔵も丁寧な造り故、簡単に増石できない。換言すれば、簡単に新規を増やせば従来の取引筋への安定供給が危ない、今時のビジネス感覚では信じられない程、商道徳が高かった。

特名酒の楽しみは「比べ飲み」に有る。とは「地酒の神様」篠田次郎先生の慧眼である。当然の事、小売店はあれやこれやと品揃えを増やす。この流れが行きつく所は、有名どころをとっかえひっかえ並べては消しの繰り返しとなる。情報の消化吸収ではなく、それの単純な消費というより費消である。後に何が残るのか。

こんな事を言っているから青二才と嗤われる。儲かってなんぼの世界を甘く見るんじゃないよと謗られた。現実に複数の蔵元から釘を刺された。あんた意見を言うのなら酒を売ってからにしな。おまいうなんておもいま千昌夫である。

地酒とは何ぞやを、「地酒」と言う単語を手掛かりに考えてみよう。


Commented by ごん at 2024-04-16 18:48
歴史の流れを興味深く感じることができました。ありがとうございます。御苦労多いと思いますが応援しています。
Commented by sasatatsu at 2024-05-02 19:20
恐れ入り谷の鬼子母神 です。
by sasatatsu | 2024-04-15 19:35 | 酒の味 | Comments(2)