「日本酒ハイ」がそれとして旨い為には一つ絶対条件が在る。原液を薄める訳だから結果「薄い」と感じられてはいかん訳だ。基の酒が「こおーーい」西郷輝彦の眉毛位(例えが古すぎるか)は必要だ。ここで断っとくが実物の西郷さんはとても気働きの利く、腰が低くどっちかっと言うと優男だよ。30年以上ゲーノー界でまともに生きてこれたのには本人の人間力が大きいのだなと、一緒に酒飲んで思った。まぁ、例えだかんね。でもって「美田」は山田錦70%のごりごりの山廃純米な訳で濃いですよ。
も一つ酒を酒で仕込む「貴醸酒」ってのがある。エキス分たっぷりの仕込みベースでさらにエキス(グルコース)を出し醗酵させるんだから酸もしっかり出るし味も濃い。仕込みのどの段階で「仕込み酒」を使うかでタイプが全く変わる。比較的最近で面白いのは「陽乃鳥」だ。第二の創業途上の新生新政の秘醸酒シリーズの一つだ。実験的試み(秘醸酒な)だから極少量の生産だ。誰でも欲しい向きに蔵から卸すキャパは無い。偶然蔵の前を通りがかって「チョイットごめんよ」と傍若無人に入り込んでめっけた風な酒だ。何が言いたいかって言うと特別に新政さんがおいらを優遇してくれた訳じゃあ無い、基本的においらは蔵元さんからは危険視される。新政の蔵人の間ではおいらはぶっきらぼうの傍若無人オヤジと看做されているらしい。まぁ、オネーチャンの懐にいきなり手を突っ込む訳じゃなし勘弁な。
一般的に、貴醸酒は酸が高くエキス分も多いので火入れ熟成して酸の角を取りエキス分もしっかり和ませて、どちらかと言うと古酒熟成酒の方向で市場へ出す。不老泉の「未来2号」なんかはその典型だ。「陽乃鳥」は新酒生の段階からブラッドオレンジか蜂蜜をかけたグレープフルーツの様な(とある女性が表現なさった)新鮮な酸がありクイッと飲めた。生はお試しで本番は火入れだなんて思ってたとこへ火入れ酒のサンプルを利く機会が有った。6月下旬だったと思う。意外に落ち着いて飲める様になっていた。
思ったより早いのだが、蒸し暑い夏にこいつのロックで炭酸割りがスカッと爽やかじゃあないかと、出荷しようとなった。
夏に日本酒ってホントは粋でいなせなんだ。浴衣に縁側で川風うけて冷やっこで熱燗を御ちょこでクイッなんてね。おいらのガキの頃、岐阜は長良の実家じゃあそうして涼んでいた。直線距離で5百メータに鵜飼の現場があり良い川風が入ったもんだ。たった45年も前の事だが今じゃあ何百億つぎ込んでもこんな情景は無理だ。なにせ肝心の長良川が死んでいる。何十年ぶりに川岸で川の苔をみて「あっこりゃアカン」と悟った。おいらがガキの頃ドブ川に生える類の苔が一面に有った。昔の芳香豊かな川苔はどの石を見ても無かった。高校に入学して以来、岐阜県人のメンタリティに愛想を尽かしてドロップアウトしたんだが、死んだ長良川を見るにつけ天に唾する思いがする。でもって縁側でクイッは無理だから。少々軽めに口へ流し易く、尚且つ存在感ある飲み方として「夏の酒ハイ」を提案する訳だ。新型貴醸酒「陽乃鳥」は美田とは別のどちらかと言えば洋風オサレな風合いで是非ともおすすめだ。
720mlのみでこの夏から1600円だ。実は仕込みベースの酒が純吟で720ml1500円の物だったと思う。1600円でも大赤字だ。まぁ実験酒だからね。
しかし、新政の酒はそこらのスーパーに置いてあるそれでも昔とは段ちに品質が上がった。地酒屋まで足を運ぶのが億劫な時、是非とも最寄りのスーパーの酒売り場で新政を買うても損はせんよ。
そん時は奥に並んだ奴から取ってくると良いかも。