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にほんしゅのせかい 言いたい放題


by sasatatsu

霧筑波 純米冷卸26BY 時が磨く

昨夜はとうとうエアコンの暖房ボタンを押した。お日さまが隠れると「冷え」が偲び込む。只今、1017日。今年の旧暦重陽の節句は1028日である。

白玉の 歯にしみとおる 秋の夜の 酒は静かに 飲むべかりけり  牧水

夏の名残が残る新暦99日は言わずもがな。今年は101日すら枯れ尾花はその遥か手前で銀ぎつねの尾の様に妖しく天に向かって光っていた。

あきふかき となりはなにを するひとぞ  芭蕉

権力欲むき出しで嘘八百を唱えて恥じない卑しい8002000が過ぎ、酒グラスに120ml酒を注ぐ。30mlを啜ったら残りを錫のチロリへ移し、3分待つ。

燗酒である。当方、この齢になってから夏も燗酒である。夏の燗は多めに加水してアル分を落とし熱めの燗を薄手の平盃であおる。

夏の燗も楽しいが、隣家の障子から漏れる灯が「暖」より「寂」を感じる秋の夜の独酌燗は最高である。障子から灯りが漏れるは、今なら時代劇のシーンであろう。かろうじて当方はガキの頃の記憶がある。ワラ草履が現役で、そろそろゴム草履に取って代わろうと言う時代である。八百屋の冷蔵庫の最上段に氷塊が載っていた記憶がある。夏の井戸水は冷たかった。

降る雪や 明治は遠くなりにけり  草田男

地元の酒ゆえ地元優先という表現的には当り前だが現実の地酒マケティングとしては非常に忍耐と忍耐と忍耐と確信と努力を必要とする方針を頑固に守り通して30年。地元優先ゆえ全国的にはほとんど無名の『霧筑波』を醸す浦里酒造店が世に問う作品、『純米 冷卸』の発売から1カ月が経とうとする。

冷卸の本質を貯蔵による味上がりと考える蔵である。

60%純米を小川酵母で醸す。蔵からの『発売のお知らせ』には(26BY醸造)と(熟成期間:15℃以下)の部分を太く表示。【お燗】・【お燗酒】も太く表示されている。落ち着いた熟成香と酒本来の光沢を持った燗上がりする酒質を目指した。その風合いを最大限得る為に二夏を低温貯蔵し、熟成酒でしか表現できないまろやかな味わいを育んだ。とある。

この蔵は徹底した低温熟成が昔からの流儀である。記憶ではほとんどがマイナス5℃で寝かされていた。繊細な小川酵母の特性を活かす為に「本生」に力を入れる。マイナス5℃は品質保持の為の仮置きではない。本生で出荷するなら搾りたてでも良い。確かに搾りたてのFFJもあるが、生酒でも熟成させて出荷する。その為のマイナス5℃である。

ところが純米冷卸に関しては15℃の二夏熟成である。と書いて来て21日となった。霧筑波純米冷卸1.8(のみ)が5日で空になった。この間インプレを書こうとキーボードに何度も向う。書けない。

弊ブログで過去にこの酒につき書いている。今年のバージョンは取分け,秀でている。昨夜は某優秀銘醸の45%純大と純米冷卸の燗を同時並行で飲んだ。一般米60%純米と山田/美山45%米大を同じ土俵で比べて遜色ない。60%をそれとして45%も同様にそのクラスとして出来が良いではない。同じ土俵で遜色ない。九頭龍逸品が何処かの大吟を圧倒する経験は良くある。そもそもの「出来が違う」と言う体験である。ここで遜色ないとは酒としての完成度が同様に高いという意味である。

貯蔵熟成は第二の醸造と呼ぶ。純米冷卸は二夏を15℃で磨かれた結果である。15℃がミソである。10℃以下では丸くなりきらない。20℃近辺では霧筑波の透明感を持ちつつの熟成酒には遠い。新酒ではないがフレッシュと言うより瑞々しさを持つ。完成前の未熟ではない。品良くしかし確実に齢を重ねた上質感とでも評すべきか。今時のウルサイ酒に慣れて感覚がにぶり直接的な刺激がないと満足できない現代人に(ワッカルカニャー)と。偉そうに上から目線で何様よ、と顰蹙を買う表現である。

先ずこの酒を飲まれるが良い。自らのバブル度を測る定規でもある。この酒を身近で入手できる茨城の酒飲みは幸せだ。


by sasatatsu | 2017-10-21 16:28 | お勧め | Comments(0)