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にほんしゅのせかい 言いたい放題


by sasatatsu

「新政」が受ける訳を考えてみた。

前稿で「新政」酵母と新政の関係について書いてみた。見返すに、思った事が伝わってこない。酵母無添加生モトのモロミで優秀なモロミを造る、と言う事は結果的に醸造的純粋酵母を産み出す事となる。現代の酵母は生物工学下における理論的純粋酵母であるからそもそもの出自の次元が異なる。

現行新政は佐藤卯三郎が実現させた醸造的純粋酵母の産出の現代的再現を狙っているのでは。

斯く勝手に決め付けて最近の新政の酒の風合いに付き「一般的」に考える。

ここで一般的と言うのはアウトサイダーゆえに新政の酒を一堂に並べて利き酒する機会の無い事。更にもっと言えば小さいタンクで何回も仕込みほとんど夏の7月まで上槽し、その都度瓶詰め、市場へと言う体制に見える。即ち出荷のたびに風合いが異なるだろう故である。

圧倒的に供給数が少ないと見え、欲しい時に欲しい物を入手が難しい。もっとも当方としてもそこまで苦労して入手したいとは思わない。仮にこれが超名人の大作で在っても同じである。一定の時間と一定の数量を種々の場面で経験して初めてその蔵の酒の理解の前提が整う。

要は今を盛りに見えるあの蔵を正確に観察できる状態ではない。

ザッハリッヒに蔵の様子を観て『発展途上』である。断っておくがここに価値判断は無い。

呑んでみた基調は「甘じょっぱい」である。普通には甘酸っぱいと表現するが新政の僕の感想は「じょっぱい」である。炭酸のシュワシュワ感がこう言わせる。

この「甘じょっぱさ」も利くロットでかなり違う。とはいえ頻繁に利く訳ではないので半年単位での差である。1年単位ですらしかるべき蔵は共通の風合い即ち「基調」を持つ。良し悪しを言う前に製品の風合いに違いがある。

なぜ甘く酸っぱいのか。である。甘いのは日本酒が米を糖化した甘酒ベースの醗酵品から当然である。そこを新政は現象として強調している。醗酵不良の残存糖分が作用、ではない。意図的に旨味としての表現であろう。

酸味は何処から何故である。従来日本酒製造の悩みは如何に酸味を抑えるかにあった。醗酵とは腐敗と表裏一体ゆえ、心地良い産と「危ない酸」が有るとして出来るだけ酸を抑えた方が軽快な風合いとなる。越後酒が一世を風靡した淡麗辛口は酸を抑える所に秘訣が有った。ここに一石を投じたのが十四代であり○九である。醸造理論の進化と環境の向上で汚染による酸味は無くなり、綺麗な酸を残せる様になった。この意味において十四や○九より早く酸を生かした蔵として酔鯨を挙げるべきだろう。熊本酵母の切れ上がる酸を酸味ではなく辛口へと生かした。

米由来の発酵食品として甘酸っぱいのは、『理の当然』である。その意味において素直な出来とも言える。だとすれば何故新政が斯くも注目されるのか。

社長の各種パフォマンスとパッケージング、造りのギミック等枝葉末節はこの際置いて、甘じょっぱいの肝、と、僕が観るシュワシュワ感を考える。

先日、人間ドックの際野飲まされたブドウ糖炭酸液の感想を書いた。炭酸が無ければ甘だるい液体で胸焼けするかも。驚きはそのガスによって酸味すら錯覚し砂糖水にボディ感すら感じた。

これである。

味覚の基本五味に。甘・酸・塩・苦・旨があると分析される。ここに辛(ラー)が無い事に注目である。辛は味覚ではなく痛覚すなわち痛覚である。従って身体の到る所で辛を感応する。メンソレータムを使った「オイタ」などは中高の運動部でよく聞いた。

ここに炭酸のシュワシュワ感が味覚ではないが口中と言う身体の一部が感応する刺激として意識される。日本酒業界では滓引きタンクへ引かずに上槽機から瓶へ引き込む『甕口』という手法が最近観られるが、あれのもっと意識的なそれである。「アレ」の「ソレ」とは・・・・痴呆老人同士の会話か。

炭酸が多いと苦味寄りの酸味とボディ感が出ることはシャンパンで判るし、端的に「ガス入り砂糖水」の飲用感が証明する。

各種酒の試飲会場における「新政」を想像してみる。1.8Lの製品は非常に稀な例外ゆえ試飲会場には720ml瓶が並ぶ。しかも冷えた状態である。開場と同時に開栓、勢い良くガスの乗ったまま720mlは俊殺!次の四合瓶も同様。これが1.8Lだったら瓶が空く頃には品温は上がりガスの勢いも弱くなっているだろう。

試飲用の小ぶりのプラカップは何時利いても甘酸っぱくピッチピチ。大瀧詠一の『サイダァ~~』の世界である。正直に言おう。ポップで楽しい。褒めていない。鼠ィ―ランドがワンダー、と同価値である。名だたる(らしい)料理人やポン酒評論家でこれを絶賛する連中の価値観はネズミ王国水準である。断っておくがネズミの価値観もカラスの勝手である。

がしかし、日本酒を食生活の一部と位置付けた時、メインとして卓上に置けるか。

「世風に流されてええ加減ぬかすなボケェ」と独り言。

不味いか旨いかに答えるとすると食事と言う世界におけば、食後のデザートのアイスクリームと考えると、良く出来ている。

ちなみに新政瑠璃ラベルを開栓常温放置4日目である。湯煎してみた。ほどよくはんなりと旨味があがる。基本的に淡麗な綺麗な酒である。化粧を落としてスッピンの燗。誰か試したろうか。ほっとする優しさがある。お勧めである。

スクリュウキャップの内部に樹脂製の中蓋(突起)が見える。ガスを保持する仕掛けだ。

「新政」が受ける訳を考えてみた。_c0155956_18474802.jpg


by sasatatsu | 2017-04-24 18:56 | 酒の味 | Comments(0)