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にほんしゅのせかい 言いたい放題


by sasatatsu

高清水 Dessrt Jyungin

秋田の大ブランドと言える「高清水」が最近面白い。あの蔵は本社工場と御所野工場の2場を持つ。伝統を受け継ぐ本社蔵と超近代化された御所野蔵と区分けされるようだが本社工場も設備の近代化を怠ってはいないだろう。御所野工場の酒の優秀さは弊ブログでも以前に記した。本社工場も小仕込でやる「和賀山塊」など時々おや!と思わせるときがある。めったに外へ飲みに出ないが、止むを得ず知らない所で飲まねばならない時も有る。ビールも、色の付いた水のようなヴィスキも好まない。「お酒をいただけませんか」とやると「はい、高清水でよろしゅございますか。」が多い。地酒居酒屋ではないので「高清水といったってあーた色々あるが、何があるの」などと無粋な真似はしなくなった。黙って燗の付いた高清水をいただく。お世辞ではない。そこそこ飲める。
発売される製品にも45%純大吟1.8Lで税抜き3千円を切る物や50%大吟1.8L2667円と従来の秋田の標準を突き抜けた物を出してきた。僕も飲んでみたが「ジャパニーズユニバーサル」と言う言葉がはまる。酒質と製造コストを器用にバランスさせている。
高清水の流通なら日本中で手頃に大吟クラスの「美味しい」酒が飲める。灘伏見の大手には届かないが酒処の大手としての「責任感」を観て取れる。身近に手頃な酒屋さんの無いとき近所のスーパーで秋田の高清水を選ぶのも外れでは無い。
欲を言えばもっと個性が欲しいのだが、ピンポイントで消費者を捕らえるのではなく普通の消費者対象としての酒質設計とすると無難な所である。ユニバーサルとは「器用貧乏」でもある(ゲホッ)。
そんな蔵が冒険?をしてきた。デザート・ジュンギンと英語で表示されている。500mlの細長いぼかし黒のボトルに金箔のラベル。いかにも女性志向である。女性向けのお洒落な低アル酒と軽く見て飲むと驚く人は驚くだろう。アル分12.5 酒度-35 酸度3.5アミノ酸1.2 酒こま55%純米吟醸である。昔から女性や若者向けに低アル分の日本酒を造れという「妄言」の類は多かった。そしてそれを狙って成功した酒というか僕が旨いと思った物は記憶に無い。どこかバランスを崩した風合いが多かった。決定的な欠点は切れの悪さにあった。醸造設計に先ず「低アル在りき」だった。一方高清水の「デザート純吟・DJGと略」は名前の通りデザート足りうる純米酒と言うコンセプトから入り、甘口でほんのり酸っぱい、言わば「甘口ワインのしっかりした物」という呑み口から追求したのではないだろうか。宣伝方法やキャッチコピーはともかく、酒が媚びていない。僕は例によって耐久試験をしてみたが4日の放置でも崩れない。立ち香含み香味に明確な劣化は無い。但し、開栓後の味上がりは無い。甘味と酸味のバランスと呑み口の切れを追求した結果がこのスペックなのだろう。
消費者に媚びていない証拠は香りの質に見える。食事との相性や喉越しも考えカプエチを抑えて、明確なそれでは無いが酢イソに振ってある。一見してFFJではない所にこの酒に対する本気度をみる。ご飯をかみしめた際の懐かしい旨味は日本人の記憶にあり実は酸味もブドウの酸では無くリンゴやナシにある丸く包み込む酸が優しい。何と言っても酒が上品である。端的な表現をすれば「今風の五月蝿い酒で無い」ことが腕前の確かさである。「低アル」がコンセプトとなればアル分20度で10度まで割っても腰砕けしない、というアプローチもある。DJGはデザート感覚をコンセプトに開発したからこうなったと思う。
この酒を頂きながらふと思った。良く出来た普通酒に少し加水して心持少々、よく出来た味醂を足すとどうなるだろうと。味醂の歴史を調べるとわかるが本来、味醂の用途は料理用ではなく上品な甘い飲み物としてあった。九重桜の本味醂、玉泉堂の味醂(味味泉)等、地酒屋にある味醂を試されると良いだろう。
高清水のDJGのインパクトは飲料としての味醂と言う発想を僕にくれた。本質を追求すると必ずどこかにつながりイメージが膨らむ。
良い酒である、ブームを超えて生き残ってほしい。弊店の向かいのスーパーにもあるだろうから僕は扱わない。秋田県内の限定販売らしいがブームの今、都会へ売らなくて何時売るのか。秋田県という概念を超えて日本の酒へと志を広げるのが高清水の役割だろう。500mlで1000円が希望価格。
Commented by アズキパパ at 2014-12-04 22:49 x
久々に松の司が呑みたくなりました。
いいのが入ってますか?
Commented by sasatatsu at 2014-12-05 14:14
純吟渡船の23BY 生モト純米 楽25BY 生モト本醸造
など水準を超えております。
Commented by 外道 at 2014-12-08 23:42 x
醸造設計に先ず「低アル在りき」だと、消費者に媚びた酒で、
「甘口ワインのしっかりした物」という呑み口の追求は媚びていない。と読み取れるのですが、その根拠は何ですか?

私の認識では、低アルコール清酒の開発はかなり古く、
昭和32年の冷用低濃度酒研究会の発足まで遡り、
以後日本盛の「セボンクール」の失敗の他、あまたの失敗が今日まで積み上がっている状態だと思います。

そのような状況の中で死屍累々たる失敗の屍を乗り越えて、低アルコール清酒を開発する事の何処に消費者への媚があるのでしょうか?安直に甘味を追求する「デザート足りうる純米酒」のほうが、甘味によるマスキング効果を使った媚びた酒のように思うのですが、、、
Commented by sasatatsu at 2014-12-09 12:15
頭で考えないで先ず飲むことでありましょう。
歴史的に清酒は消費者の手許ではかなり
低アル分でした。清酒の原酒が20度近く
沸かされる意味と背景は弊ブログでも論じております。
何故原酒で低アルが必要なのかそこに疑問を持つ
ものであります。
高清水の現物は簡単に入手できます。御飲みになって当該酒
が甘味によるマスキング効果を狙ったとお感じなら、それで結構な事だと思います。
by sasatatsu | 2014-11-30 17:48 | お勧め | Comments(4)