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にほんしゅのせかい 言いたい放題


by sasatatsu

復活 和心雄町24BY

9月28日の夜の事、店のPCに来たメールである。でっかくフォントを大きく太くして『復活!です』とある。彗星のように現れて消えた、と言うとかっこ良いが、彗星はじわじわと見えるようになってまたじわじわと消える。この酒の場合は流れ星だった。乾坤一擲、渾身の作品としてデビュウした。確かに凄味ある酒だった。岡山県津市の難波酒造が出す「和心」シリーズの中核作品、「特別純米雄町」である。今年の2月頃には「特純雄町」については蔵の在庫が切れ、看板製品の無いままに、あれこれやりくりして来た「和心」シリーズだ。復活の文字に初めての試みの「和心の会」が一回転出来た蔵の喜びを感じつつ、『去年よりも一月ばかし発売が早かないか』と思いながら『どれどれ注文して見よう』となった。
たった今、(10/3だが)岡山から遠路最果ての地秋田へ『復活!』が到着した。基本的に店内における利き酒は閉店後にやることにしている。鑑評会の様に口の中で含んで外へ吐くやり方は「実践的で無い」のだ。こんな方法を良しとするから「今の酒の姿になる」。この行は思いっきり主観的だ。正確に言うと「おいらの呑み方では無い」と言うべきだ。さらっと触れ合い軽く次のお酒、はいその次、と華麗に振舞える今風はそれで現実なわけで「蓼食う虫もすきずき」である。さすがに今回はおいらも閉店を待ち切れず利いてみた。
栓を開けグラスへ注ぐ軽く黄金色である。炭素濾過は無しか、有っても極軽くだろう。立ち香を利く。基本的には硬質で透明な酢イソ系の香りが漂う。こちらからグラスへ鼻を持って行って初めて判る。今風の吟醸のようにグラスからこぼれ溢れる事は無い。酢イソ系とは言っても典型的なそれでは無い。硬質な香りを柱に妖艶な香りがそれを包むように上がる。使用酵母はお得意のダブル酵母か。1501と1401かもしれない。含んでみる。舌の真ん中を頂点に太い酸を中心にした旨みがドンとのっかるように広がる。口の中の両端にじわっと果実様の酸味が沁み出るように感応する。呑込んだ後爽やかなこれも酸が余韻を引く。おいらがガキの頃にせっせと食った小ぶりのミカンの酸っぱさを連想する。「酸」と書いているがそれぞれ性質が違う。含み香は意識しないと太く厚みのある酸味に隠れてしまう。酒歴は雄町60%、酒度+6、酸度1.6アル分15度とある。データからは辛口に利けるが感応的には「軽快な押し出し」とでも言うべきか。「押し出し」と来れば重厚感が付きそうだが根が淡麗故に切れ良しと軽快に向う。
今風の酒と決定的に違うのは残存糖分の甘さの無い事だ。味がどうの香りがどうのと言う前にしっかり湧いてこその酒と言う職人気質を感じる。
23BYより約1カ月早めの出荷の為か、酒が若いと言うか心もち軽い感じがする。ここからはおいらの経験則なのだが雄町や山田錦系で60%位の磨きの場合、上槽年の10月を超えてから劇的に風合いに貫禄がついて来る。その意味では10月の和心雄町12月の和心雄町(と蔵元で物が続けば)と風合いの変化を楽しめる。
「変化を楽しむ」大前提に酒質の劣化の無い事があるのだが、基本的に骨太の酒である。「酒は湧かしてナンボ」と言う古風?なしかし真に本質的な姿勢が当たり前にみえる。低アルだ風合いのソフト化だ等と言うマーケティングの小賢しさの対極で難波酒造の考える雄町純米の提示と言う目的は達成されている。あえて欲を言うとこれでもまだ消費者に媚びを見る。販売会限定で売る訳だからもっと尖がっても良い位だ。その尖がり具合を説明し楽しめるのが会員制で売られるお酒の真骨頂だとおもう。
23BYのあれだけの完成度という「プレッシャー」もなんのその、この蔵の実力は非凡なものが有る。職人が積み上げて来た伝統なのか、正統派による真っ向勝負のような潔さすら感じる。万事インスタントな現代にあって稀有な存在であろう。斯く感じる現実を寿ぐべきか悲しむべきか。
この酒については再度、日を置いてレポートしなくてはならないかもしれない。
換言すればそれ程に複雑な酒ではある。1.8L2700 720ml1350辺りが希望小売となる。


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by sasatatsu | 2013-10-03 18:10 | お勧め | Comments(0)