にほんしゅのせかい 言いたい放題


by sasatatsu

「和心 山田55 生原酒」

一部では既に注目されつつある岡山県津山市の難波酒造の会員制の限定酒「和心」シリーズの5番目が発売された。「和心」シリーズは昨年の10月にスタートし、定番品が2月上旬には品切れ、以降、傍目にも慌てまくって酒をやりくりしているのが見える。そろそろ皆造(全ての仕込みを終える)を迎えるそうだからこう言えるのだが、シリーズのコンセプトも明白で無い、出荷も毎月月初めに発売と言うだけで具体化したのは3月の末だった。最初の雄町特純とその次の同原酒までは原酒と加水品の酒質の大きな違いに驚き、おいら個人としては楽しみ、雄町の本場による「雄町使い」を感心して見ていた。
初めての試み故か、酒が良すぎる事も在るのだろう、定番が早々に品切れしてからは、製品を発売するだけで精一杯の様子が見て取れた。それでも驚嘆すべき事は製品の酒質が高品質を保って居る事だ。例えば、23BY岡山県品評会の純米酒部門で知事賞を得た「朝日米65%純米」の再現レシピと、蔵の専務が称する純米生原酒。これは同シリーズにおける初めての24BY(厳密にはキヌヒカリ60%特純が該当するがこの段階では極一部向けだったろう)酒になる。
辛口な事を言うが、「知事賞酒の再現」と言う事がピント外なのだ。朝日米65%純米を極める事と受賞酒を再現する事とは基本的な姿勢が違うと言う事が理解されていない。日本に「広く難波酒造を問う」のなら受賞レベルで無くその上を挑戦する気概であるはずだ。で、その酒についてはおいらも苦労して利かせて頂いたが、発売から丸2カ月を経た今でも淡麗旨口の佇まいを保っている。普通なら後熟で「甘だれ」が出て重くどくなるがそうならない。生熟特有の「生ヒネ臭」も感応しない。岡山県だけで細々と栽培の続く朝日米にもう一度光を当てる試みは成功している。
話は外れるが美山錦や改良信交の祖先に「東の亀の尾」が居る事だけに目が行っていたが何と、「西の朝日」の血も入っていた。
各県の持つ酒造米の銘柄を岡山県で観ると備前の名を冠した「雄町」は当然だが「山田錦」もある。生産量は全国3位らしい。これらが有名すぎるのか他の米が記されていない。お高い山田と雄町が主たる地元酒米とは蔵にすれば有難迷惑かもしれない。
そんな「山田錦」の55%精米で、「純吟生原酒 和心 山田錦」が発売された。前触れが長かったが純吟山田の発売へ至る過程がおいら的にはこの酒を象徴すると思う。
山田錦55%純吟造り、近頃の新酒お約束の「生原酒」である。アル分18度、酒度+5、酸度1.5 アミノ酸1.0と酒歴である。酵母は非公開だがカプロン酸系酵母が主体だろう。難波酒造お得意のダブル酵母仕込みだと思って利くと「フムフム」と楽しみが増す。純米吟醸造りでアル分18度とはちと高い。加えて発酵能の低いカプロン酸系酵母だ。温度操作をしくじったか。呑んでみれば判る筈。
立ち香は御約束のカプである。出品酒でよくみられるブンブン迫るそれでは無い。この手の酵母としては上品に抑制されている。酸度の1.5はカプ系酵母独特の舌に纏わりつくくどさを上手く調和させる。ここにアル分の高さも加わってやや辛く利ける。例によってチョロッと水を加えてやると香味がより鮮やかに感応する。
誰にでも判り易い酒質と言う意味では「和心」らしくない。山田と言う米は熟成させると他の米に無い特性が出る。55%まで磨けば尚更である。その意味ではこの酒の真価は火入熟成を待って評価すべきだろう。とは言ってもここまで判り易く加えて厭味ない「吟醸」は市場が黙っていないだろう。生原酒で全量売れてしまうかもしれない。
地元主体の販売から全国へ向けて取り扱い店限定で「和心」を発売した意図は何処にあるのか。この「純吟山田55」を利く限り判らない。あえてきつい事を言うが、カプロン酸酵母を使ったこの風合いなら正確に酒を造れる蔵なら横に並ぶ事は可能だろう。某有名酒ブログで「雄町特純」が「くそみそ」の評価だったが、単純明快判り易くは無いが奥深く、追求すれば限りない、そうであるからこそあのブログにおける評価になるのだ。ひと頃の淡麗辛口から新タイプの濃醇旨口と言うかはっきり味の判るタイプへと切り替わりつつある最近の流れに有って淡麗旨口と言う何処かに忘れられていた個性は、さらに洗練されて日本酒界の一角を確保できる可能性を感じる。
これから一枚も二枚も皮がむけてより「難波酒造」へ向かって進まれる事を祈念して止まない。
1.8L 3000円 720ml 1500円 (抜き)が希望小売となる。


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Commented by 黒部 at 2013-04-11 20:53 x
はい!一升で購入します♪ 辛口な日本酒界のサムライである佐々辰さんが惚れた蔵です。今後販売されるお酒は全部飲んでみたいので各種類全部取っておいてくださいね。
Commented by sasatatsu at 2013-04-12 12:40
惚れたとかの主観的な話では無く、個性と実力が有ってそれを出し切れていないのが「勿体ない」と思うのです。内実が真に百花繚乱という日本酒の世界を見たいのです。応援ありがとうございます。
by sasatatsu | 2013-04-10 20:11 | お勧め | Comments(2)